未来のコンピューティングを予見したコンセプトビデオ
1987年。コンピューター産業に携わる人々の間で大きな衝撃を受けた動画があります。
Apple社による「ナレッジ・ナビゲーター」という未来のコンピューティングのコンセプトビデオです。私も同様に衝撃を受け、このナレッジ・ナビゲーターの世界が実現することを、長きにわたって夢観てきました。
最新のAIが実現する”デジタル秘書”
2023年に大規模言語モデル(LLM)であるChatGPTの登場は、21世紀になって急速に進化している生成AIの大きな節目となる”第三次AIブーム”として人々に大きなインパクトを与えています。
2024年にはChatGPTの開発元であるOpen AI社が、人と会話しているように流暢にコミュニケーションも可能なChatGPT-4oを発表。このOpne AI社に大規模な出資をしているマイクロソフト社は、Windows OSやOfficeソフトウェアなどにChatGPTを組み込んだAIアシスタントである「Copilot」を提供し、さらにはAIを活用する「Copilot +PC」をリリース。仕事や趣味の生産性を大幅に向上させようとしています。
Google社はGemini 1.5をリリース。Googleが誇るGmail, YouTube, Googleスケジュール、スケジュール、マップ、ドキュメント、フォトなどの豊富なアプリを基盤に、AIで横断的に利便性を高めようとしています。
このように飛躍的な進化を見せているAIの世界ですが、冒頭に述べた「ナレッジ・ナビデーター」を超えるには至っていません。
今から37年も前の1987年にApple社が発表した「ナレッジナビゲーター」のコンセプト動画では、カリフォルニア大学バークレー校の環境科学の教授が、授業の準備から父親のバースデーケーキを買うまでの様子を描いています。
この動画に登場するタブレット端末には蝶ネクタイをした「デジタルパーソナル秘書」が登場します。今日のスケジュールをデジタル秘書から告げられた教授は、午後の大学の講義の準備をしていないことを知ります。
そこで、教授は講義内容に関する最適な論文をデジタル秘書に見つけてもらい、統計データやグラフの生成など、複雑なデータの解析と視覚化をしてもらいます。
さらにデジタル秘書は、その論文の著者である他の大学の教授のデジタル秘書と連絡をしあって、ビデオカンファレンスをアレンジします。
二人のビデオカンファレンスでは短時間ながらも素晴らしいコラボレーションに。
講義の中で、遠隔地からリモートで参加してもらうことになりました。
「ナレッジ・ナビゲーター」に登場するテクノロジー。エージェント機能は未実現。
このコンセプトビデオの中では、思いつくだけでも、次のような一連のテクノロジーが登場しています。
1,タッチスクリーン式タブレット端末
2,小型メモリカード
3,ハイパーテキスト、分散データベース
4,大学の研究ネットワーク(インターネット)
5,可視化シミュレーション、
6,ビデオ会議、オンライン協調作業
7,そして、音声認識で対応するエージェント(電子秘書)
これらの1~6については、すでに実現かつ実用化されています。
一方で、7については、このコンセプトビデオのようなエージェント機能はまだ実現できていません。しかし、ChatGPTの登場を契機に、実現が近づきつつあることが感じられます。
現時点で、このナレッジ・ナビゲーターのエージェントの働きに一番近いと感じられるのはGoogleのGemini 1.5。
2024年6月10日から開催のApple社の開発者会議(WWDC)ではApple社がどのような発表を行うのか?
自社が40年近く前に公開したコンセプトビデオである「ナレッジ・ナビゲーター」の実現に近づくものなのかどうか?
大きな関心を寄せています。
”ナレッジ・ナビゲーター”の実現は、私にとって、車の自動運転の実現とともに、楽しみです。
補足:ナレッジ・ナビゲーターについて
アップル社のナレッジナビゲーターは、1987年に同社が発表した革新的なコンセプトビデオに登場する架空のデバイスです。このビデオは、未来のコンピューター技術と人間のインタラクションを描いたもので、当時としては非常に先進的なアイデアを提示していました。ナレッジナビゲーターは、タッチスクリーン、自然言語処理、ハイパーテキストネットワークへのアクセスなど、現在私たちが当たり前と考えている多くの技術を予見していました。このデバイスは、個人のデジタルアシスタントとして機能し、ユーザーが情報を検索し、スケジュールを管理し、通信を行う手助けをするというコンセプトでした。
ナレッジナビゲーターのコンセプトは、アップルの元CEOであるジョン・スカリーによって提唱され、故スティーブ・ジョブズがアップルを去った後の時期に発表されました。このビデオは、当時の人々には受け入れられなかったものの、後にSiriや他のAIアシスタントの開発に影響を与えたと考えられています。ビデオでは、教授がタッチスクリーンを搭載したタブレット端末で同僚とビデオカンファレンスを行い、研究論文を検索し、日々のスケジュールを管理する様子が描かれています。これらのシーンは、現代のデバイスやソフトウェアで実現されている機能と非常に似ています。
ナレッジナビゲーターのビデオは、技術の進歩が指数関数的に速まることを示唆しており、多くのアイデアが現実のものとなりました。例えば、無線LAN、長時間駆動バッテリー、非接触充電、折りたたみディスプレイ、タッチパネルインタフェースなどが、ビデオで描かれた未来の技術です。これらは、当時は実現不可能と思われていたものの、今日では私たちの日常生活に欠かせない技術となっています。
ナレッジナビゲーターのコンセプトは、テクノロジーが人間の生活をどのように変えるか、そして未来のコンピューティングがどのような形を取るかについての洞察を提供しています。このビデオは、アップルがいかに先見の明を持っていたかを示しており、現代のテクノロジー企業が目指すべきビジョンの一つとして今日でも多くの人々にインスピレーションを与え続けています。